New Adventures in Narratives, Ecstasies - about "ON 02"

このタイトルの意味は、直訳すれば「物語性と快楽の新しい試み」。
なにによる「新しい試み」なのか?
それによって得られる「新しい物語性」「新しい快楽」とは何なのか?


「新しい物語性」、この言葉は、昨年のインドでの滞在制作の時に何度もファシリテーターに対して発言した言葉。その滞在制作で求められていたのは、地元のダンサーとともにビデオ・ダンスを作るということだった。そもそも、地元ダンサーとコラボレートできるメディアアーティストという条件で参加した僕にとってはクリエーションの前のワークショップで見せられる無理矢理に形式化された映画的なビデオ・ダンスに対して関心が持てなかった。そんな中で一つのスケッチワークを作る際に、ふと思い出し引用させてもらったのが、前田真二郎氏の「ON 02」で試みられていた、フレームの輝度をアナライズし、暗いものから明るいものへフレームをソートし直す、という手法だった。
リキシャーから撮影された夜のデリーの町並み、そのワンショットをその手法で処理する。映像的な意味でのナラティブ - 映画的なナラティブ - ストーリー/シナリオ/それによって引き起こされる感情 - リキシャーに乗り、同乗のフランス人と風景について話しながら自分たちの部屋まで帰る - そういう流れは失われ(一般的な意味での人の理解できるものではなくなり)、エクストリームなワンフレーム単位のカットアップがそこに現れる。
かっこいいビジュアル、であるとか、絶妙なタイミング、であるとか、そういう本来映像的である要素は排除され、そこにあるのは、適当に撮影された素材そのままのフレームとタイムライン上に表されるグラフ的な何か。しかし、その点滅に近い画面が3分の間に徐々に明るくなり、激しい明滅へと変わっていくその構造は、僕にカタルシスを与えるのに充分だった。

映像の「内容」ではなく、その「プロセス」によって語られる物語

New Adventures in Narratives, Ecstasies

http://ekran.jp/event/

ON 02
  • 2003 / digital / 5'00″
  • video screening
  • directed by 前田真二郎

2000年に発表した72分の映画"オン" は、12万以上のフレームで構成されています。そのフレームの輝度を解析し、暗いものから明るいものに並べ替え、5分の長さに圧縮したものが "on 02"です。

前田真二郎

映像作家。情報科学芸術大学院大学(IAMAS) 准教授
1969年生まれ。 京都精華大学大学院美術研究科修了。 映像メディアを「未知を発見する道具」と捉え、 コンピュータを用いた自動編集による映像作品や、 規則を基にした撮影行為の連鎖から生成される映画などを制作する。代表作に「オン」(2000/香港国際映画祭)、「日々 "hibi" 13 full moons」(2005/山形国際ドキュメンタリー映画祭)がある。2005年よりDVDレーベル"SOL CHORD"の監修を務める。
http://maedashinjiro.jp/